心理、感情→行動→モノで空間、間取り、家は考える

住宅

こんにちは、編集長の福田です。
家、間取りや空間を考えるときに、暮らしている時の感情から組み立てるということについて今回はお話します。
少し抽象的な話なので、難しいかもしれませんが、生きる空間である家を考える際にとても大事な考え方になるので参考にして頂けると嬉しいです。

家は機能的で美しく、コスパさえ良ければ住む人は幸せなのか??

機能的で美しければ、住む人は幸せかというと。
実はそうとも限らないのです。

もちろん、機能的だと便利です。美しいと気持ち良い。それも事実なのです。
ただ、必ずしもそれがイコール幸せとは限らないのです。

感情→行動→モノで考える。逆はダメな場合も。

空間を考える時には、「感情→行動→モノ」という順番で考えます。
この順番を逆にするとうまくいかない場合もあります。

今回は具体的に収納を例にとって考えてみます。

つまり、機能的な空間(モノ)→片付けも便利そう→すっきりして気持ち良いという考え方だと、モノを対処するので、収納を増やそうとなります。
これは上手く行かない人が多いです。

どうして収納を増やす=モノからフォーカスすると上手くいかない??

収納が増えれば、片付けができそうと思う方は多いのですが。
意外とそうでもないのです。

私の友人でもそういう方がいました。
狭いアパートの頃は収納する場所がないからだと思っていましたが、いざ収納の多い新築分譲マンションに引っ越してみても、モノが溢れてしまうということでした。
最新の間取りで、収納たっぷりをうたっているマンションだけあって、本当に収納は多いのです。ウォークインクローゼットが2箇所あり、廊下には、ずらっと壁面いっぱいの収納棚が並び、洗面脱衣室も広く、タオルや肌着をしっかりしまえる大きな収納があります。

そして、暮らしている人数もお子さんが実家を出て、今はご夫婦二人。
それでも、やはりリビングは物で溢れていて片付かないと言います。

いかに、モノが良くても、片付けがうまく行かない典型的なタイプです。

心理から始めるということ、感情から考えるということ

モノから始めず、感情から考えていくとどうなるでしょう?

どうして収納が欲しいと感じているのかというと、すっきりして気持ちの良い空間で時間を過ごして、心身リラックスした安らいだ気持ちになりたいという感情からスタートします。

逆を言うと、安らげる空間さえあれば、収納はなくても良いのです。

安らげる空間とは? リビングに無駄なものが落ちていなかったら気持ち良いと思いませんか。
リビングのどこに座っているとリラックスできそうでしょう?
ダイニングの椅子? ソファ?
だれが? ご主人? 奥様?
いつ?

大きな収納、モデルハウスのような空間??
全てをそうしようとすると上手く行かないのです。

感情から逆算して、行動を考えます。
日々の行動がどうなれば、目的の感情(リラックスした安らいだ気持ちになれるか)
そして、その行動になるように、空間(モノ)を考えていくのです。

本能、心理に逆らうことは難しい。散らかっている方が安心する?

もう一つの問題として、その人が片付けが出来なかったのは、収納量が少なかったからではないのです。
片付いていると不安なのです。

不思議なことのように思われるかもしれませんが、実は人間は少し散らかっている方が落ち着くという側面もあります。

人間の心理の性質として、
何かを手に入れる時にはウキウキします。
何かを手放すときには決意が必要だったり、寂しさがあります。

片付けというのは、根本的には、所有物の優先度の順位を決めるということです。
よく使うものは手元の使いやすい位置に置きたい。
あまり使う頻度の高くないものは奥にしまいたい。
不要なものは捨てないといけない。

片付いていない状態というのは、所有物を全て使いやすい手元に置いてしまっている状態です。

これはある意味ですごく安心します。
捨てる、優先度を判断して奥にしまうということをしないからです。
手放すということをしていません。

何も対策しないと人間は散らかしたい、所有物を手放したくないものです。そして、所有物で満たすことで縄張りを作りたいという動物としての本能があります。

2つの箱で解決。手元に全て置いておきたい、捨てたくないという心理的な問題

じゃあ、この片付け問題、どう解決すれば良いのかというと、箱を2つ用意してあげるということです。
・リビングにものが落ちていたら、Aの箱に入れて下さい。
・この箱がいっぱいになったら、Aの箱を空にして、しまって下さい。
・原則として、しまうのはリビング以外のところ、収納に入れて下さい。
・この時に、これはもう使わないかもしれないと思ったものは、Bの箱に入れて下さい。

Aの箱は、手元に置いておきたいという本能を解決するための箱だと言えます。
物をしまいたくない、手元に置いておきたい。
それで、リビングに物を積んでしまいます。
いったんAの箱に入れてしまうことで、リビングに積むことを防ぎます。

Aの箱は大きすぎると、仕分けせずぐちゃぐちゃになってしまうので、小さい方が良いです。少し小さすぎると感じるくらいでも良いでしょう。

そして、Bの箱は、捨てたくないという本能を解決する箱です。
いきなり捨てるはどうしても厳しいのです。
ひとまずBの箱に入れる。

いずれは捨てるという問題を先延ばしするようでもありますが、捨てるかもしれないものという仕分けまで辿り着けたら、劇的に改善されます。

Bの箱についても、大きすぎると仕分けしにくくなりますが、それでも、Aの箱と違い、Bの箱に物を入れるという行為は良い行為です。できるだけ多くBの箱に入れていって。理想的なのは、
「もう仕分けるのも面倒くさいし、Bの箱の中身は全部捨てよう。必要なものはもう一度改めて買おう」
と思えたら理想的です。

いきなり捨てられなくても、仕分ける、優先順位を意識する。
これが片付けの第一歩です。

間取りにおけるAの箱、Bの箱

では、空間を考える時にAの箱、Bの箱をどう考えると良いでしょう?

単純にリビングの収納を増やすというのは、巨大すぎるAの箱を作ってしまうことになります。

先にも書きましたが、Aの箱は便利ですが、あまり大きすぎると、仕分けしなくなり、そこからグチャグチャになってしまいます。
小さめの収納を1箇所作ってあげて、そこにAの箱を置くと良いでしょう。

Aの箱はいすぐに手が届く場所、リビングのどこからでもすぐに物を入れたくなるような場所が理想的です。リビングの扉を開けて、廊下を通って別の部屋よりは、リビングにオープンに置かれている方が理想的ですが、見た目の問題もあるので、収納の中などで隠せる方が良いかもしれません。
そして、セットでBの箱を置いてあげます。

床に物を置かないAの箱。
捨てるという判断の第一歩のBの箱。

物じゃなく、服が散らかって困っている人は、Bのクローゼットゾーンを考えることが重要です。

テレビとソファとダイニングテーブルの心理

ここまで収納で考えてきましたが、もう一つ、リビングのレイアウトの心理を見てみましょう。

リビングのレイアウトとして、テレビ、ソファ、テーブルの問題があります。
これもやはり感情から逆算してレイアウトしていくと上手くいきやすいです。
何も考えず、モノだけ考えると、適当に、テレビ、ソファ、テーブル、キッチンと配置してしまいがちです。

ヒントとしては、ダイニングテーブルのどこにお母さんが座るか?を考えてみましょう。一般的には、キッチンから近いところにご飯を作る人が座ることが多いでしょう。お父さんがご飯を作る家なら、キッチンからの動線が近いところにお父さんです。

そこからテレビは見えますか?

ダイニングの全ての椅子からテレビが見えるようなレイアウトはどう思いますか?
なんだか良さそうですね。
でも、ご飯を食べる時くらい、テレビを決して家族の会話を楽しむというのも良いかもしれません。

食後、ダイニングテーブルとソファの距離感はどうでしょう?
食後、ダイニングテーブルには誰が座っていますか?
ソファには誰が座っていますか?
その人はどんな感情を抱いていますか?

一見すると良いことでも、本能、心理に反することは多い

収納は非常に分かりやすいですが、その他のことでも、
一見すると、片付いている=良いことのよう見えて、本能的には反してしまっているということは多いのです。

・家族は仲が良い方が理想的なように見えますが、一人きりの自分の時間が欲しいと感じる人は多いです。
・集中できる独立した書斎があれば良いように見えますが、逆に家族とのつながりがなく、落ち着かない、孤独な書斎は使いづらいと感じることも。
・はたまたリビングに面した書斎ゾーンは集中できない人も多いです。
・ゴロリと横になって、一人きりでテレビを眺められるソファは気持ち良いです。ほかの家族がテレビが見にくい位置だと、特にテレビを独占しやすいです。でも、家族みんなでテレビを見て盛り上がるということはしにくいです。

こういった、理想と心理、本能の現実が対立する問題は非常に難しいのです。

理想の感情→理想の行動→モノ

この時に、どういうアプローチを取るか?
住まう本人が、明確な意思を持って、どういう未来を過ごしたいかを考えるということです。

テレビを見るのに、一人で独占したい、家族と仲が良いよりも、父親こそが偉くて、家は父親がくつろぐ場所だ、という考えなら、父親が快適な空間を考えるのが良いでしょう。

家族みんなでの会話があって、家族が仲の良い家が良いなら、家族の動線が重なる空間を考えるべきです。

住まい手がどういう感情になりたいか、それに基づいて、どういう行動をしたいか、それをサポートできる家になっているか。

これが、感情→行動→モノの家の作り方の原則です。

感情を解決しないと行動は改善されない。行動が改善される空間じゃないと幸せな暮らしは難しい

かなり難しいお話でした。
プロでも難しい。私も正直難しい(笑) 住宅の仕事をしていく限り、一生追求していくテーマと言えるでしょう。

モノから考えない、感情から考えて、行動、モノと逆算していく。
難しい話なんですが。
ぜひ、みなさまのお家づくりにお役立て下さい。