編集長が自宅で実際に取り入れたこと、取り入れなかったこと

住宅

こんにちは、編集長の福田です。
子どもも生まれて、やっと私も自宅を建てました。
知人からは
「すごい高級な家を建てたね」
と言われたりもしましたが、実は案外、そんなに高くもないんです。

↓YouTubeでも一部公開しています。

リビングなどは広く高級に見えても、実はそんなに大きくない家で土地も上手く探せたので、アパートの家賃と大して変わらないくらいの住宅ローンの支払いに抑えられました。
今回は実際に私が自宅を建てるために使ったテクニックをご紹介します。

一番のコツは中途半端に無難にしない、失敗を恐れない

まず注文住宅での一番のコツは無難にしないということでしょう。
そして、良い物ばかり取り入れようとすると上手く行きません。
何事もそうですが、欲張るとバランスが悪くなってしまってイマイチになる場合が多いです。
大事なのは、大胆に不要なものを取り入れないことでしょう。

とはいえ、実際には家を建てるというのは、一生に一度のことなので、みなさん、なかなか思い切ったことはやりづらいです。
思い切ったことまでやらなくても良いのですが、無難にすると、規格住宅や建売の家のようになってしまいます。

暮らしのテーマ、その家のテーマを考えるのが大事です。
家もある意味では立体造形作品なので、テーマやメリハリがないと、満足行くものにはなりにくいです。

私の自宅では、テーマはとにかくリビングの快適な家
リビング以外の部分については不要なものは出来るだけなくして、家族がリビングに集まりたくなる家をテーマにしました。

人気だけど取り入れなかった部分、オプション

自邸で思い切って取り入れなかったことを先に書いてみます。
取り入れない、却下するといことはとても大事だと私は考えていますし、多くの人にとって難しいことでもあります。

設備関係のオプションはナシ

設備関係、キッチン、トイレ、洗面、お風呂に関してはほぼすべて標準で行きました。
(お風呂の物干し棒を一本だけオプションで付けました)

割と最近は設備関係をアップグレードしてお金をかける方も多いです。
しかし、標準のままでも暮らすのに困りませんし、戸建て用の設備、特に注文住宅で標準採用している設備ってアパートなどと比べると、結構良いものを使っている場合が多いです。標準と言っても色などはかなりの範囲から選べます。
(もちろん、この辺りは会社によって標準で付いてくるものが違うので、会社によってはいくらかアップグレードした方が良い場合もあります)

何よりも標準採用しているものはお得に入ってきます
ちょっと専門的な話になりますが、設備メーカーと住宅会社の間で、
「この洗面台を標準で使ってもらえて、年間○件以上使ってもらえるなら、お安くします」
という交渉があります。
ですので、大原則としては、設備は標準採用品を使う方がお得です

また、水回りの設備については、いずれはリフォームも必要になります
リフォームの際にちょっと上のグレードのものに交換してみるなどの方法もあります。

そういった理由から、自宅では思い切って標準で選べるものだけにしました。

ウォークインクローゼットはナシ

昨今の注文住宅では大半の家でウォークインクローゼットがありますが、思い切って無しにしました。
理由として、ウォークインする通路部分が不要だと考えたからです。

3畳の大きなウォークインクローゼットを1つ作るのではなく、1畳の普通のクローゼットを3つ作るという考え方で収納を作りました。

ウォークインクローゼットは総2階の2階建ての家だと良い場合もあります。
(※総2階とは、1階と2階の大きさが同じ家のこと)
2階の隅っこにウォークインクローゼットが入ることで、建物の外観も真四角になって綺麗に整う場合もあります。
住宅会社によっては総2階の方が安い会社などもあります。
自宅については平屋ということもあってウォークインクローゼットはなしにしました。

廊下ナシ

玄関ホールもなくして、本当に完全に廊下がない平屋にしました。
昔の日本の古民家の廊下のない間取りをオマージュして間取りを組みました。
入って広い土間があって、お客様を迎えられるLDがあって、その奥に各自の個室があるという間取りです。

廊下なしのおかげで26坪と小さな延床面積でも、広いリビングが作れました。

ただし、廊下なしの平屋は音は抜けます
特に平屋は全ての部屋が一つのフロアになるので、音を抜けないようにするには廊下がある方が良いです。

自宅については、リビングに家族が集まる家というテーマなので、音については問題ありません。

個室のプライバシーをどう考えるか次第でしょう。
子どもが集中して勉強できる、音が抜けない子ども部屋が欲しい人は、廊下を作る方が良い場合もあります。

対面キッチンもナシ

今の新築は90%以上の家が対面キッチンですが、対面キッチンにしませんでした。
変形地で間取りに制約があったので、対面キッチンにするとどうしてもリビングがイマイチになったので、思い切って壁付けのキッチンにしました。

対面キッチンをやめたことで、キッチンの面積を減らして、その分リビングを広く取れました。
対面キッチンですと、一般的に約5畳のスペースが必要ですが、壁付にすると4畳ほどのスペースで大丈夫です。(たったの1畳の差ですけどね)

ただし、対面キッチンの方がキッチンからリビング全体を見渡しやすかったり、収納も大きく取りやすいという面もあるので、やはり対面キッチンの方が多数派ではあります。
それでも、対面キッチンにこだわりすぎないことも重要です。

自宅で取り入れた部分

取りれなかった部分、切り捨てた部分もたくさんありますが、逆に取り入れたオプションや工夫も多いです。

勾配天井、斜め天井で高さを出す

広さを演出する上でベタな方法ですが、リビングの一部を板張りの勾配天井(斜め天井)にしました。
勾配天井は高さのある空間が出来るので、実際の畳数以上に広く感じられます。
板はレッドシダーで独特の色味が美しく映えるよう狙いました。

勾配天井の造作や板張りといったオプションは決して安くはないですが、お金をかける以上の効果があると考え、取り入れています。

ポイントは勾配天井の範囲を絞ることでコストを抑えることです。
勾配天井は通常の天井よりも金額が高くなります。
また、空間が広くなるということは冷暖房の金額に影響します。

LDの約半分である8畳のソファとテレビ側のスペースだけを勾配天井にする、範囲を絞ることでコストを抑えました。
広さでコストを抑えた分、無垢のレッドシダーを使う予算の余裕を作れました。

勾配天井が広くなり過ぎると、勾配天井のための金額もかかりますし、ましてや板張りまでしようと思うと範囲が広くなるのでコストが大きく変わります。

また、リビングすべてを勾配天井で高くするのも良いですが、部分で分けることで空間にメリハリが出来ます。
8畳の部分だけというと狭く感じる人もいますが、縦の空間の広がりについては、そんなに広い部分を作らなくてもリビングの快適性は上がります

リビングだけ無垢フローリング

家族やお客様が集まるリビングにだけ無垢フローリングを使いました。
リビングの天井が無垢材なので、やはり床も無垢材にしました。
子どもが小さいので、傷や水に強いオークにしました。パインや杉のような足ざわりの柔らかい木を使いたいとも悩みましたが、男の子なので床をボコボコにしてくれそうですので(笑)

無垢じゃなくて、集成のフローリングに、木目調のクロスの天井にしてコストダウンする方法もありましたが、家の中心をリビングと考えたので、本物の木を使いました。

リビングとつながる部屋を背の高い引き戸で

リビングと引き戸でつながる部屋を作り、全開にすればリビングの一部の空間として使えるようにしました。

また、リビングとつながる部屋の引き戸の高さを工夫してあるのもポイントです。
扉の高さが低いと、引き戸を開けて開放した時に、リビングとのつながりが感じにくく、普通の引き戸の部屋という感じになりがちです。
ハイドアや特寸などの背の高い引き戸でつなぐと、リビングの延長としての空間を作れます。

リビングと引き戸でつながる部屋については、音が抜けてしまうというデメリットも理解しておくことが大事です。
利用頻度は少ないけれど、来客が泊まるときなどたまに個室として使いたい部屋などで使うのがオススメです。

逆にずっと個室として使う部屋を引き戸で仕切ると音が漏れて良くないでしょう。

このタイプの部屋はリビング以外でも二階のホールと引き戸でつなげる部屋など、バリエーションがあります。

フレキシブルに使いたい空間、完全な個室として作るには少々もったいないけれど、たまに個室として使いたい空間。
家族の変化によって将来必要になるかもしれない部屋、あるいは使わなくなるかもしれない部屋などで活用すると上手く行くでしょう。

目隠し付きのウッドデッキで一石三鳥を狙う

一般的にウッドデッキは実用性の面では役に立たないものも多いです。
憧れと何となくのオシャレのために付ける場合も多いです。

しかし、ウッドデッキは上手く作るとかなり効果があります。

リビングを外に延長する効果

まず、視覚的にリビングの延長空間としての効果があります。
リビングを2坪大きくするのはかなりの金額が必要ですが、2坪のウッドデッキはそこまでの金額ではありません。
ウッドデッキで外にリビングを延長すると、非常にリビングの空間が大きく感じられます。

外からの目隠し

次に外からの目隠しです。
自邸ではウッドデッキの手すりで道路からの目隠しになっています。

外から目隠しる方法は他にも敷地の境界にフェンスや木などを立てる方法もあります。

これは敷地によります。
敷地が広くて、ウッドデッキを下りたところからも庭が取れそうなら、ウッドデッキで目隠しにして仕切ってしまうのはもったいないでしょう。
逆に自邸のように道路と距離が近い場合や、ウッドデッキの前がすぐ駐車場という場合にはウッドデッキの手すりで目隠しにしてしまう方法は良いです。

ウッドデッキの手すりを目隠しにするメリットは金銭的なメリットもあります。
敷地の端にフェンスを立てる場合、フェンスが倒れないようしっかりと工事をしないといけませんので、結構な金額がかかります。また、広い範囲にフェンスを立てないといけませんし、高さもしっかりした高さが必要になります。
また、周囲の家はフェンスをしていないのに自宅だけフェンスを立てると、浮いてしまうかもしれません。

子どもの遊び場、洗濯の物干し場など暮らしの実用性

少し広めで手すりのあるウッドデッキは子どもを遊ばせるのにも便利です。
焼き肉なども良いですね。
また、平屋の場合、洗濯物を外干しをすると人からの視線の問題もあるので、目隠しがある物干しスペースとしても便利です。

アウトドアリビングという言葉も最近はありますが、一般住宅程度の土地の大きさの場合、道やお隣からの目線などを考えると、外でくつろげるスペースを作ろうと思うと難しい場合も多いです。
実際にどの程度使うかを想定して、目隠しなども合わせて考えることが重要です。

ロードバイクを置ける広い土間から直接リビングをつなぐ

ロードバイクを置ける広い土間の玄関が欲しいというのも大事なテーマでした。
しかし、単純に広い玄関を作ると、家が大きくなってしまいます。
そこで、玄関ホールをなくして土間から直接部屋に上がる、昔の日本の古民家のスタイルの玄関にしました。

玄関ホールをなくして、全て土間にすると、かなり広い土間の空間が出来ます。
また、この広い土間を、背の高い引き戸でつなぐことで、リビングを広く感じる事ができます。
冬は玄関からの冷気が入らないよう扉は閉めて使って、暖かい季節は開放してリビングを広く取ります。

信州ではない暖かい地域でしたら、扉はナシにする方法もあるでしょう。

柱を見せる、無垢材の家具を使う

ちょっとした装飾ではありますが柱を意図的に見せることで木の雰囲気を強くしています。
バランスよく木を配置する上でも、柱を見せるのは有効です。
例えば、自邸の場合、玄関側にウッドデッキ、天井板張りと木の要素が強いですので、玄関の反対側に柱を見せてあげることで木を要所に置くことを意識しています。

また建築的な部分だけじゃなく、家具でもバランスを取ることは重要です。

特に本物の木を多く使った家の場合、家具が弱いとバランスが悪くなります。無垢材の家具で木の雰囲気を家全体にバランスよく作っていきます。

家のトーンを照明で作る

照明で家の中の空間のイメージは大きく変わります。
使う照明と、内装の色、雰囲気などに統一感をもたせることで、良い空間を作れます。
というのも、人間の目は光を見て物を認識しますので、照明の強さ、当たり方、色は空間のイメージの大きな部分を握ります

照明はヨーロッパと日本の家の違いの一つでもあります。
日本は白い強い灯りの蛍光灯を天井の真ん中に付けます。明るいのが良いという考え方です。
これに対してヨーロッパでは、電球色の暖かい灯りを、スタンドライトや上から吊るすペンダントライトなどで、暗闇の海の中に光を島のように浮かべるようなイメージです。キャンドルなどもそうですね。少しほの暗い程度の明るさがちょうど良いという考え方のようです。

自邸では、ペンダントライトやスポットライトなど、比較的ゴテゴテした照明で、電球色系の暖かい色の明かりを使っています。蛍光灯で強く照らしていません。
とはいえ、子どももいますので、そこまで暗い家にはしていません。

ただ、普通の日本の住まい、アパートなどと同じ照明と比べれば少々暗いです。
ですので、子ども部屋については明るい蛍光灯にしています。

土地は安いところを

家づくりで重要なことの一つに土地があります。

土地は将来的な資産性を考えると高いところの方が良いという考え方もありますが、売却の予定がなければ安い土地のメリットは大きいです。固定資産税なども安いです。

土地は予算ギリギリ。
坪数もギリギリ。
内装などのオプションにお金がかけられない。
そういう家づくりの方法も一つの選択肢ではあります。

「別にカフェや雑貨屋をするわけでもないんだから、家の内装などのオプションなんかにお金をかけないで、土地の立地と広さにお金をかけよう」という考え方もアリです。

私はリビングだけは快適にしたかったので、ここまでに出てきた工夫が出来るように予算配分しました。
土地が高いエリアだと、ウッドデッキを付けたりする心理的な余裕はまずなかったでしょう。

土地を高いところにするか、安いところにするか、ここの戦略で家づくりの方針は大きく分かれます。

まとめ。正解はないけれど、自分たちにとって家とは? 暮らしとは?

今回は自宅で取り入れなかったもの、取り入れたものについてご紹介しました。
私の自宅の場合、間取りから土地の考え方までかなりこだわりがあります。
かなり変わっていると言っても良いかもしれません。

家づくりの仕事をしていると、本当にいろんな方を見ます。
決して安くない金額を出して、分譲地の一角の何の変哲もない規格住宅を買う方も少なくありません。

家って何か?
家づくりの仕事をしていて、いろんなご家族の相談に乗っていると、そういうことをよく考えます。

一口で言ってしまうと、家って暮らしだと思います。
暮らしが積み重なって人生になると思います。
例えば、真っ赤な壁紙を貼った家に暮らすとしたら、活動的でアドレナリンが出るという意味では良いかもしれませんが、ゆったりと過ごすことは難しいでしょう。
毎日赤い壁を見て生きるか?
色一つとってもそうです。

子ども部屋はリビングから近いほうが良いか? 広い方が良いか?
食事の後、家族はどこで時間を過ごしていたら良いと思いますか?
家事はしやすい方が良いですか?
重い洗濯物を2階のベランダまで運んで干すのと、1階のリビングの隅で干すのと、ウッドデッキで干すのとどれが良いですか?
リビングでは何をしますか?
書斎で仕事はしますか?
仕事ばかりで家族と触れ合う時間がない人生と、仕事とプライベートはメリハリを付けて家族と楽しく過ごせる人生、どちらが良いですか?

どんな家でも、どんな暮らしでも、人間、生きていくだけなら生きていけます。

ただ、家が違えば、暮らしが変わります。
家で暮らしが積み重なって、その人の人生になります。

どんな暮らしがしたいかしっかり考えて、それに合った家を作っていくのがとても大事だと思います。