良い家とは。絵と音楽と植物のある家について。

住宅

こんにちは、編集長の福田です。

良い家って何ですか??
そんな難しい質問を頂きました。
良い家。人によって価値観はあるのですが、私が家づくりの仕事をしていく上での私の考えを今回は書いてみたいと思います。

別に私は偉い建築家でも何でもないので、そんなに難しい話まで突っ込んでできるわけでもないのですが。
でも、偉い建築家の先生は一般的な庶民が無理なく買える、普通の住宅について考えることって少ないと思います。
美術館のような立派な大きな建物や橋やビル、店舗、それからお金持ちの人むけのこだわりの高級住宅、そういうものについては考える人が多くても、「普通の人が普通に買える住宅」で「良い家」とは?について考えている人は案外少ないんじゃないかなと思います。
長野県の地域工務店でコツコツと、普通の一般の人が手に入られられる良い家を作るという立場と合わせて、本当にごく個人的な主観で『良い家』について考えてみたいと思います。

絵と音楽と植物? それから本?

人がリラックスできる良い空間として、ホテルのロビーや、オシャレなカフェなどがあるんじゃないでしょうか。
そういった場所にあるけれど、一般住宅にないのが、絵と音楽と植物じゃないかなと僕は思っています。
もちろん、一般住宅と店舗は考え方はずいぶん違いますし、「普通の家に絵と音楽と植物なんてキザなこと言いやがって!」と思われるかもしれませんが。
それでも、住宅のリビングもカフェもホテルのロビーも、人がゆったりとリラックスできる空間という目的は共通でしょう。

絵でも写真でも良いのですが、自分の好きなもので空間の壁を飾る。
何かリラックス出来る好きな音楽が流れている。
観葉植物や花が飾ってあったり、庭の木が美しい。

良い家とは少し離れてしまうのですが、極端な話、貧乏アパートでもそういう暮らしをされている人の部屋というのは気品があるもので、良い空間であることが多いです。

そして、案外、思い返してみると、学生時代など若かった頃は多くの人が自分の部屋で好きな音楽を流したり、好きなポスターなんかをはってみたり、植物はどうですかね? 何かしら自分の好きな空間を作っていたんじゃないでしょうか。
自分の好きなもの、理想とするものみたいなものが人間の内部にはあるものです。大人になるとついつい色々なことを忘れがちですが。
そういった自分の理想が反映されている空間とは良いものです。
カフェやホテルのような上品なものでなくとも、その人の好きなものに満たされている空間とは良いものです。

とは言え、賃貸のアパートではどうしても自分の好みの建具などは使えませんし、間取りや外観なども至って平凡なものになりがちです。
注文住宅は上手に建てれば、そういうことをしっかり反映させられます。
自分たちが本当に好きなもので、自分たちのすまいを満たすことができるのが、大人の注文住宅じゃないかなと思います。

そういう意味で、ものすごく極論ではありますが、絵、音楽、植物がある家。
それが、外部にまでにじみ出ているような家というのは美しく住みやすい良い家なんじゃないかな、と私は考えるのです。

実際には、店舗ではないのでずっと音楽が流れているということもないでしょうし、小さな子どもがいれば植物は飾りにくい、絵なんて飾る趣味はない。
いろいろと意見はあるでしょうが。
可能であれば、この3つがある空間、この3つがしっかりと調和できる家というのは素敵なんじゃないかと思っています。

実際には、誰しも自分のすまいに、何かしら音楽やテレビのような音を流します。絵じゃなくてもカレンダーを書ける人も多いでしょう。小さなサボテンを置く人もいるでしょう。

家とは自分と外の世界の境界とも言えるんじゃないでしょうか。
物理的な結界として屋根、壁、床、窓。精神的な結界として、絵、音楽、植物
私はずっとテントで暮らしていた時期があるのですが、テントだと自分と外の世界の境界とは限りなく曖昧です。それを楽しむのがテントの暮らしでもありますが。
植物というのは、あまりに明確に自分と外の世界の境界である家の結界が強くなりすぎることを中和して、外の世界を家に取り込むような要素なんじゃないかなと思っています。
(こういう意味ではわんちゃんのようなペットも、ある意味で植物的な役割を持っているんじゃないかと思います)

あくまで、この辺りは自論です。
それでも、美しい空間には絵、音楽、植物があると私は思っています。

この3つに加えて、あとはなんかもそうでしょうか。
ホテルのロビーやカフェにも、何となくおしゃれな本棚に本が並んでいて、オシャレな雰囲気って感じたことがある人もいるんじゃないでしょうか。
本棚は日本の伝統的な建築である書院造りの名前にも書院とあるように、家の主の知性や品性が表される場ともいえます。
ただ最近は電子書籍も増えたので、この辺の事情は少し変わってきていますね。

さらに言えば人によって違いますが、楽器などの趣味の道具を飾るのも良いでしょう。
その家に住む人の好きなものに満たされている空間っていうのは素敵です。

どうして歳を取るとそういう自分の好きな空間を作らなくなってしまうのか。
一つに無意識の部分で恥ずかしいということがあるんじゃないでしょうか。
結婚して、家族と一緒に住めば自分の好きな音楽もかけにくくなることもあるでしょう。
無個性に無難に生きるのが楽だと、大人になるにつれて無意識のうちに感じてしまう。
若い頃のように素直に自分の好きなものを表に出さなくなって、無難に余所行きの生き方に慣れてしまう。

でも、家はあなたの家族の空間なので、ぜひ好きな生き方を空間に反映させて欲しいと思います。

建築家、設計事務所が建てる家=良い家?

良い家とはなんぞや?という定義を考えると実に難しいなとは思うのですが、たとえばどんな家が好きかと考えると。
例えばですが、建築家の中村好文先生の住宅は素敵だなと思うので、何冊も本を持っていて、暇があれば眺めることも多いです。
もっと正確に言うと、中村先生の建築自体が好きということもありますが、中村好文先生は文が上手で読み物としてすごく面白く、建築家として好きというよりは思想家として好きなのかもしれません。
中村先生の住宅の本には癒やしがあります。

本を出しているような建築家の先生の作る家は、絵と音楽と植物が似合うものです。
ジブリの音楽が似合うようなふんわりしたやさしい家、固いバロック音楽が似合うような家もあれば、さわやかなボサノバが似合うような家、かっこいいサックスのジャズが似合う家、力強いゴスペル音楽の似合う家、ヒップホップが似合う家。
建築家の作る家でも実にいろいろありますが、何かしらのテーマがあり、空間に音楽、絵、植物が何かしら合うものです。

逆を言うと、好みが分かれるとも思います。好きな人は好きだけれど、そうじゃない人は好きじゃない。建築家の作品というのはそういうものです。

これに対して、ハウスメーカーなどの作る家というのは、万人向けなので、あまり音楽を感じにくい無個性な家が多いように私は感じます。
もちろん、ハウスメーカーの家でも、こういったことを理解して、積極的に雰囲気を作っていけば音楽の似合う空間にはなるのですが。

でも、じゃあ、実際に自宅を建てるのに大好きな中村好文先生に依頼するかと言うとそういうわけにもいきません。

ザックリ言ってしまうと、それはもう単純にお金の問題です。
そりゃ、憧れますけどね。
人生、家にだけそこまでお金をかけるわけにもいかないです。

絵と音楽と植物の話に戻りますが、家はあくまで箱であって、中にある絵や音楽、植物も大事なわけです
そして、そういった中身を選ぶのは、その家の人です。
その人の人生が反映されるものです。
人生のバランスが取れていないと、絵や音楽、植物をたしなむ余裕というのがなくなってしまうと思います。

だから、すごく素晴らしい建築であっても、有名な建築家の先生のお高い設計料のかかる家は、住宅としては、僕個人が購入するには無理があります
住宅はあくまで人生を運ぶ箱なので、箱も大事ですが中身とのバランスが重要だと思います。

一生に一度だから良い物を買うべき?

さて、ここでよく言われる話ですが、一生に一度の本当に大事なものなんだから多少無理をしてでも妥協なく買うべきだ、という理屈があります。

これって本当なんでしょうか。
美しい家、暖かい家というのは本当に素晴らしいと思います。
だけど、支払いに無理のある家っていかがなものかなと思います。

安いだけでは良いとは言えませんが、バランスこそ重要でしょう。

人生の生涯年収の内、いくら家にかけるか?

金額について考えてみると生涯年収を考えてみますと。
仮に年収が500万円だとして、40年間働くとしたら、2億円です。年収一千万円だとしても4億円。
人によってはねもっと年収が高い人もいれば、少ない人もいるでしょう。はたまた定年が伸びてもっと長く働く時代が来るかもしれません。
でも、いったん話を単純化するために、年収2億円として話を進めます。

日本人の年収は世界の中でもかなり高いですが、一生の内に稼げるお金なんて2億円程度なんです。老後2000万円問題という言葉もあるので、老後に2000万円必要だとしましょう。
子どもの学費は一人あたり600〜2000万円程度必要と言われています。

さて、そういう数字を考えた時に、家と土地にいくらかけるのでしょう?

中には家と土地に5000万円以上かける人もいますが。
長野県は地方ですが、松本でも立地のいいところなら土地が1500万円くらいはします。家についても良いお値段する有名ハウスメーカーで坪80万円の✕40坪くらいとなれば3000万円は越えますし。外構やらなんやらすればなんだかんだで5000万円くらいにはなります。

家と土地で5000万円。生涯年収2億円なら実に4分の1を家に使ってしまうことになります。
しかも、実際には固定資産税や修繕費などもかかります。

ちなみに他にもいくつか数字を考えてみましょう。

家賃五万円のアパート=年間60万円=50年住むとして3000万円です。実際には更新料などもかかるので、もう少しかかるのでしょうが。

300万円の車を10年に一回買い換えるとしても、40年で1200万円です。

食費は月に3万円だとしたら、年間で36万円、50年で1800万円ですね。

こうして考えると、やっぱり5000万円は高いと思います。
あなたの人生の労働の大半は住居に消えてしまうとも言えます。

家を新築するのが当たり前の国JAPAN?

また、日本が変わっているのが、家は新築するのが当たり前ということです。
戦争で焼けたということもあるにせよ、日本では100年以上前の建物が現役で使われているということがあまりないです。

海外なんかは結構100年以上前のアパートが今も現役で使われているなんてことは結構普通にあります。
ブエノスアイレスは南米のパリとも呼ばれる美しい街です。
アルゼンチンのブエノスアイレスに旅行した時、安宿のエレベーターが昔ながらのもので、手動で扉を開け閉めするものでした。
建物自体から風格が漂っていました。

アルゼンチンは先進国じゃないからそんな古い建物なのか、と言うとそういうわけでもなく。
ヨーロッパの友人なんかに聞くと、築百年くらいのアパートでも普通に今も使われるものはたくさんあるということでした。

日本で築百年というと、ほんど観光向けのものでしょう。
ちなみに百年前というと1922年ですから大正11年です。一般住宅として大正11年の建物が使われていることはほとんどないでしょう。
法隆寺のような世界最古の建築物も残る一方で、一般の人が実用として使える築100年の建物は少ないのも事実です。

木造建築だからということもありますが、戦争で焼けてしまったこともあります。
戦争で焼けてしまってから、急いで住宅不足を解消するために、安くて簡単に建てられる家が増えたこと。
それに核家族化も一気に進んだこと。

こういった背景から日本の家は安く、簡単に建てられ、そして、簡単にボロボロになって、すぐに建て替えられるようになったという背景があるのでしょう。
今の木造住宅は在来軸組工法とは言うものの、神社やお寺のような建物の伝統工法とは違います。神社やお寺を建てる宮大工さんは多くはありませんし。また、そういう宮大工さんがお寺と同じような伝統工法で一般住宅を建てることは少ないです。

また、日本国内の戦後の影響のみならず、全世界的に安価に作れる石油製品による大量生産大量消費の流れもあり、ますます「修理しながら長く使う」という考えは少なくなってきています。

築40年にもなると、下手にリフォームするより建て替えた方が安い。
本当に深刻な問題だと思います。

YouTubeで見られる家づくり勉強会

電線も含めて絶望的に町並みが美しくないJAPAN?

日本の住宅の問題ということでもう一つ上げるとしたらとにかく外観が良くないです。
全く絵になりません。

ヨーロッパが素晴らしいとは一概に言えませんが、それでも、ツール・ド・フランスのような自転車レースを見ると町並みの良し悪しは明確に分かります。
ツール・ド・フランスは終始街並みや風景が美しいです。
東京オリンピックの時に日本の自転車レースの風景がテレビで流れましたが、本当に絵になりません。一部、富士山の麓のような住宅のないところは美しいのですが。

一つに住宅が良くない。
そして、空が狭い。
さらに、その狭い空の中を電線が汚い。

電柱をなくして、家と家の間の距離をある程度取れば、いくらか日本の街並みも良くなるでしょう。

もちろん、日本にも歴史的な建物の並ぶ地域などは美しいところもありますが。
一般的に普通の市街地は街並みが美しいとはお世辞にも言えないんじゃないかと思います。
東京のビルの風景などは未来都市的で美しいかもしれませんが、普通の市街地は絵にならないとしみじみ思います。

それでも、家は誰しも建てるときには出来るだけ美しくなるように工夫しているはずなのです。
それでも、町並みが整わない。

これは住宅それぞれの問題もありますが。
全体的に街を美しく保つための工夫がありません。
都市部では少しずつ電線の地中埋設も行われていますが。

仮にですが、京都の街に美しいお寺などを考えてみて下さい。仮に、あの街でも電線がぐちゃぐちゃしていて、お寺の向かいにホームセンターやスーパーなんかが乱立していたらどうでしょう?
残念ながら絵にならないでしょう。

日本の伝統的な建物と、現在の建物は大きく乖離してしまっているので、どうしても合わないですし、元々の日本で育った美意識の延長線上に今の住宅はないので、こういった問題が起こります。

日本はせっかくゴミが落ちていない清潔な町ですし、世界的にも日本建築は美しいと認められているのに、絵にならないというのは本当に寂しい物があります。

可能なことで工夫するということ

JAPANの家は長持ちしないし、街並みが良くないのは残念ですが。
しかしながら、一般の人が個人でどうこうできる問題でもありません。
これに対して、家にどんな絵を飾ろうか、どんな植物をどこに置こうか、どんな音楽を流すか、そういったことを考えてみるというのは誰にでもできることでしょう。

お金に関しても、お金をたくさん出すことで、実現できることもあります。
しかし、残念ながらお金を出しても、良い家が実現されない場合もあります。

人生は有限です。
お金をたくさん出さなくても工夫次第で家に音楽、絵、植物を入れることは当然ながら可能です。

例えば、柱などで木が見える部分を意図的に作れば、自然な雰囲気ができるでしょう。
逆に木の感じでじゃなく都会的な洗練された雰囲気といことであれば木は見せない方が良いかもしれません。
久石譲のSummerのような音楽が流れる家なら、木と塗り壁の自然な雰囲気でも良いかもしれませんし、白ベースに水色の壁紙を一面に使ってみて爽やかな抜ける感じを狙ってみるなども良いかもしれません。

そういう内装的な面じゃなく、間取りで言えば吹き抜けや勾配天井によって空間の高さを作ると、背の高い植物をおくことも可能でしょう。
また、背の高い空間の上の方に光が入る大きな窓があると、植物にさんさんと太陽が注ぐでしょう。

たった一枚の絵で、部屋の雰囲気を大きく変えることも可能でしょう。
別に本物の何万円もする絵じゃなくて良いでしょう。複製画でも良いでしょうし、長野県なら近所の山の風景をスマホで撮って、額に入れて飾るだけでも随分イメージが変わります。
また、絵じゃなくて、山の見える美しい窓があるのも素晴らしいでしょう。

そういうのって、案外、そんなにお金はかからないものだったりします。
もちろん、お金がかかるものもありますが、お金をかけないように作る方法はあります。
お金をかけても良いと思う部分と、お金をかける必要がないと思う部分が分かるとうまく家を考えていけるでしょう。

性能は?

住宅の性能は断熱や耐震などがあります。
他の記事でもたくさん書いているので、この部分については手短に書きますが。
長野県の場合、断熱はかなり優先順位の高いものになるでしょう。
断熱については、省エネ基準の北海道基準で作れるかなどが目安になるでしょう。(ZehやG2などいくつか基準はありますが)
UA値やC値など根拠のある数字と合わせて説明してもらうと良いでしょう。

また、日光の入り方、窓の大きさなどの考え方がきちんとしているかも重要です。
南の大きな窓は太陽の熱が取れるので、冬も暖かい家になりますが、北大きな窓は家が寒くなる原因になりやすいです。
夏の涼しさには屋根と窓のの位置関係なども重要です。

太陽光については、どちらでも良いでしょう。
太陽光は最初に無理してつけなくても、本当に必要になれば後から取り付けすれば良いです。
新築建築時じゃないとこだわれない部分を考えるのが重要です。

「最初の金額は高くなりますが後からお得になりますよ」
というのは、よくあるセールストークですが。後からできることは後に回すのも大事です。また、それが本当のことなのか確認することも重要でしょう。
売上のための嘘のこともあるでしょうし、単純に営業マンの勘違いの可能性もあります。

耐震については可能な限り耐震等級3を取ることが望ましいですが予算との兼ね合いもあるので、ちょっと難しい部分です。
耐震等級3をとるというのは、詳細な計算をして、認定をうけるということです。等級3は取得する方が間違いないですが、昨今の新築は在来工法でも構造面材を全面に貼る工法なども増えて実質的に耐震等級3は取れるであろう建物も多いので、簡易的な計算のみにして等級3は取得しない人もいます。
予算が許す限りは耐震等級3は取る方が間違いないでしょう。

こういった性能面は、ぱっと見では分からないのですが、実際に住むと暖かい家は住みやすく、地震に安心の家はやはり良いものです。

家事のしやすさ

家事のしやすさは重要ですが、一種のブーム的なものもあるんじゃないでしょうか。
特に近年は、シューズクローク、パントリー、室内干しのランドリースペースなどが人気ですが、言葉が一人歩きして、中身のないブームみたいになっているものも少なからずあるでしょう。

うまく作るとすごく家事が楽になりますし、暮らしが便利になりますが、漠然と付けると、「あってもなくてもどっちでも良かった場所、物置と化した」という残念な場合もあります。
明確に暮らしをイメージして目的を持って作ることが重要です。

シューズクローク、土間収納

シューズクローク、土間収納があると何となく便利な感じはしますが、靴箱に入り切らないほどの靴は処分することも考えたいところです。
最初の絵と音楽と植物に話が戻りますが、本当に好きなものでしたら良いと思います。
靴を集めるのが趣味でしたら、ぜひ大きなシューズクロークを作って靴のコレクションを眺められるようにすべきでしょう。
しかし、漠然と靴が多いからという人は、ちょっと考えてみるのも重要です。
一軒家の大きな靴箱に入り切らないほど靴がある人は、いずれシューズクロークにも入り切らなくなります。

家に帰ってすぐにコートをかけられるというのもありますが、靴の匂いがするところにコートをかけるのは嫌という方もいます。

趣味の大事なゴルフバッグや釣り道具をしまいたいなど、明確な目的がある場合にはシューズクロークは便利でしょう。

パントリー

パントリーについても、具体的にパントリーに何をしまうか検討することは重要でしょう。アパートのキッチンと違い、一軒家のキッチンはかなり広いので、さほど多くのものを収納しなくても大丈夫ということもあります。
実家が農家でたくさん野菜やお米がもらえるということでしたら、パントリーは便利でしょう。
また、専用のパントリーではなく床下収納を活用する方法もあります。

「パントリーにちょっとしたカウンターがあると便利ですよ」
というセールストークもありますが、パントリーにこもって何かする局面ってあまり多くないものです。
お父さんは書斎、お母さんはパントリー、いつからかそんな流行ができましたが、LDKにみんなが集まって、LDKで何かする、そういうライフスタイルの場合、書斎やパントリーなどを細かく分けない方が良い家庭もあるでしょう。

ランドリースペース

ランドリースペースについては、慎重に考える方が良いと思います。
家事の中で一番大変なのは洗濯だと感じている家庭は多いです。しかし、専用の洗濯のためだけに何畳も場所を取るのは考えものです。
現実問題として、部屋干しは暖かくて広さのあるリビングの方が乾きやすいので、リビングの一角、着脱式の室内干しを付けるのが効率としては良いでしょう。
リビングに付ける場合は、お客様が来たとき用に洗濯物の避難場所として、お風呂や洗面所に物干し棒をつけられるようにしておくのも重要です。
お客様がよく来るという家の場合は、洗面脱衣室を広めにして室内干しに使うのも良いでしょう。2階の階段ホールなども有効活用しやすい場所です。特に冬場は階段から上がってくる暖かい空気が洗濯に有効活用しやすいでしょう。

キッチン

すべての部屋について細かく考えていくとキリがないですが、キッチンは家事の中心になる場所です。
そして、キッチンもこだわり始めるとキリがない部分です。

キッチンをどの程度こだわるかによっては、高額な設計事務所で完全に造作のキッチンを考えて家を建築するのもいいんじゃないかなと思います。
造作キッチンとは、既製品のシステムキッチンではなく、引き出しなどを全て細かく考えて作るキッチンです。
地域工務店でもオーダーメイドのキッチンは対応できますが、やはり細かい造作については、普段から造作のキッチンをメインで手がけている設計事務所に依頼するのが良いでしょう。
逆に設計事務所という名前でも、造作キッチンが得意じゃないところではあまり意味がないでしょう。

ただ、やはり金額とのバランスを考える必要がある部分です。
キッチンは少しこだわるだけでも、金額が大きく変わるポイントです。
既製品のシステムキッチンは金額を抑えやすく、多くの人が使いやすいように考えて作られています。既製品とは言っても、様々な形や大きさ、色なども選べます。

もちろん人によってケースバイケースですが、一般住宅で多くの場合、使いやすくて価格の抑えられたシステムキッチンを使うのが良いんじゃないかと私は考えています。
機能面でもキャビネットがスムーズに動いたり、掃除がしやすいなど、システムキッチンは総じて良くできていると思います。

それでも、キッチンは家の中心になります。
キッチンは、衣食住の中の食住に大きく関わる場所です。
重要だからこそ、金額も大きく変わる部分です。
自分達の暮らしに本当に必要なのはどんなキッチンか考えてみるのも家づくりで重要な部分になるでしょう。

やはりここも最初の絵、音楽、植物に戻りますが、キッチンが造作じゃないと、求める家が実現できないのであれば、造作だったり、システムキッチンでも高級なグレードにこだわってみるのも良いでしょう。
標準のシステムキッチンで、良い空間を作る工夫を考えてみるのも重要でしょう。

まとめ。良い家について考えてみることも

長くなりました。
良い家って何か。随分哲学的なことだと思います。
むしろ、本来なら本を一冊使って書くようなテーマですので、かなり短く省略して書いたようにも思います。

あくまで地方の工務店のおじさんの個人的な主観にまみれた『良い家』なので、「なんだそりゃ?」と思った人もいるかもしれません。

家づくりに限らず、「できること」ベースで物事を考えるのは人生でとても大事なことだと思います。
無理をせず安心してできることを考えるのは大事だと思います。
特に、昔のようにどんどん給料が良くなって、老後の年金も安心という時代じゃありません。
お金がなくても、餓死することはないにせよ、きちんと計画して生きている人とそうじゃない人で大きな差が出る、特にお金に関してはシビアな時代だと思います。

じゃあ、安ければ安いほど良いかというと、そう単純でもないのが今の時代の難しさでしょう。

性能や利便性はもちろんとして、快適性、美しさが求められる時代じゃないでしょうか。
もちろん、いつの時代でも普遍的にそういったものは求められたのでしょうが。
カフェやホテルのロビーのような快適な空間を自宅に求める人が増えた時代じゃないでしょうか。

昔は一部の裕福な人や特別な人しか求めなかったもの。
例えば、車が一人一台になり、電話も小学生からスマホを持つ時代、パソコンはもちろん、タブレットもあって当然、掃除機のコードはなくなりましたし、服にしたって厚着をしなくても暖かいユニクロのヒートテックが安価に手に入ります。今回の話題で出た音楽についても、昔はレコード一枚買うのに随分な金額を払ったのが、今や途中で少しCMが流れるものの無料で聴き放題のサービスもあります。

住宅もただ住めれば良いではなくなりつつあります。
高額な高級メーカーや有名建築家さんの設計事務所だけじゃなく、地域の工務店でも工夫して美しくて、性能の良い住みやすい家を、しかもリーズナブルに提供できないといけない時代でしょう。
地域のリーズナブルな工務店と、有名建築家さんだと具体的に作るものは違うにせよ、目指す部分としては、快適な住まいでしょう。
金額的な部分が違うので、どこまでを求めるかというのは違うにせよ、要素としては絵と音楽、植物という部分は共通なんじゃないかな、と私は思うのです。

人によって言葉は違うかもしれませんが、私の「良い家」とは「絵と音楽、それから植物のある家」というところだと思っています。

松本諏訪地域で良い家をコスパ良く建てるならエルハウス
タイトルとURLをコピーしました