こんにちは、長野県茅野市の工務店エルハウスの滝沢です。
住宅の断熱性能を決める重要な断熱材。様々な種類がありますので、何が良いのか悩まれる方も多いかと思います。私たちがお家づくりをお手伝いしている長野県の諏訪・松本地域は寒さの厳しい地域です。冷暖房費にも大きく関わってきますので、なおさら気になりますよね。
断熱材の中で最も使われているのはグラスウールです。調べるとグラスウールは良くないという記事も多く出てきますが、誤解が多いのも事実。そこで、今回はあえてグラスウールのデメリットに注目してみたいと思います。
グラスウールとは?
本題に入る前に、グラスウールってどんな断熱材なのかを整理しておきます。
グラスウールは、ガラス繊維を綿状にした断熱材です。繊維と繊維の細かい隙間に空気をとどまらせることで、小さな空気の部屋を無数につくり、断熱性能を得ています。いま最も普及している断熱材です。
一番使われているのにはもちろん理由があります。最大のメリットとしては、価格が安いことでしょう。「同じ断熱性能を得るために必要なコスト」を他の断熱材と比較すると圧倒的にグラスウールが安くなります。
また、主原料となるのはガラスですが、その多くを再利用品で賄っており、使用後のグラスウールもさらに再利用が可能です。地球にやさしい、エコな材料でもあります。不燃ガラスが主原料のため、燃えにくいという特徴もあります。もし火事が起きてしまったときでも、燃え広がりにくく、一酸化炭素などの有害ガスの煙に巻かれることもありません。
グラスウールのデメリット
さて、ここからが本題です。グラスウールのデメリットについて見てみましょう。
内部結露しやすい?
「グラスウールは内部結露を起こしやすい」と聞くことがあります。壁の中で結露が起こることを内部結露といい、最悪の場合、柱や土台などを腐らせてしまうこともあります。誤解しないでいただきたいのは、グラスウールだから内部結露を起こしやすいわけではありません。内部結露が起きる原因は、施工方法に問題があるためです。
かつては、グラスウール施工の知識が乏しく、不適切な施工により内部結露を起こしてしまう事例があったことは事実です。しかし、他の断熱材にも同様に施工不良による内部結露のリスクはあります。断熱材の種類にかかわらず、正しい施工をすることが内部結露を防ぐ唯一の方法です。
デメリット?水に弱い?
グラスウールは水に弱いです。グラウスール自体に吸水性はありませんが、ガラス繊維の隙間に水分が入り込んでしまうと本来の性能を発揮できません。一度濡れてしまうと、完全に乾燥させることが難しく、乾燥したとしても繊維同士がくっついてしまうため、断熱性能が低下してしまいます。
また、水分を含み重くなると、グラスウールがずれ落ちることもあります。そうなると、その部分に断熱材がなくなるので、断熱欠損してしまいます。当然、カビが発生する恐れもあり、柱や土台など建物を支える木材への影響も起こりえます。
そのため、グラスウールを濡らさないことが重要です。当たり前ですが正しい施工を徹底すること。特に、気密性と防湿性を高めることがポイントです。
デメリット?断熱性能が低い?
断熱材の断熱性能の比較には、熱抵抗値を用います。よく、熱伝導率と混同してしまい、グラスウールは断熱性能が低いと勘違いされます。熱伝導率と熱抵抗値は、意味が違いますので注意が必要です。
熱伝導率は断熱材の材質で決まり、熱の伝わり易さを表します。つまり、値が小さいほうが熱を伝えにくく、断熱性能が高いです。一方、熱抵抗率は使用する断熱材の材質、厚みから決まり、次式で求められます。
熱抵抗値=断熱材の厚さ/熱伝導率
熱抵抗値は、熱の伝わりにくさを表すので、その値が大きいほど断熱性能が高いです。
グラスウールより熱伝導率の良い断熱材は数多くあり、同じ厚みにすればグラスウールよりも断熱性能は高くなります。しかし、当然その分コストがかさみます。そこを加味すると、決してグラスウールは断熱性能が低いわけではないんです。先ほど述べたとおり、グラスウールは「同じ断熱性能を得るために必要なコストが安い」のですから。
もちろん、グラスウールにもグレード(密度)があり、熱伝導率が低いものもあります。(価格も当然上がりますが。)ここはコストのバランスですね。
デメリット?発がん性がある?
「グラスウールは発がん性があるので危険だ!」と誤解されている方もいるようです。一時期問題になったアスベスト(石綿)と混同しているのかもしれません。
グラスウールは、アスベストと違います。安全性の高い物質です。国際がん研究機関(IARC)により、Group3の「ヒトに対して発がん性に分類されない」という評価を得ています。これは、紅茶やナイロンなどと同レベルの安全性を意味しています。ちなみに、コーヒーは1ランク危険なGroup2Bの「ヒトに対して発がん性が疑われる」に分類されています。
結局、グラスウールは良い?悪い?
今回は、グラスウールのデメリットについて考えてみました。グラスウールは何となく良くないのかな?と思っていた方、いかがでしたか?
グラスウールはそんなに悪いものではありません。むしろ、メリットの方が大きいと考えます。
ちなみに、私たちエルハウスはグラスウールを使用しています。
やはり、性能だけ、コストだけでは決められません。必要な性能を、如何にコストを抑えて実現するか。そこが家づくりをお手伝いする我々にとって、一番の腕の見せ所なのかなと思います。
まとめ
数ある断熱材の中でグラスウールが最も使われているのは何故か?断熱材に限ったことではないですが、各ハウスメーカー、工務店はそれぞれのメリット・デメリットを考慮した上で選定しています。使用する資材がいくら良くても、施工がヘボければ断熱性能のよい暖かい家はできません。断熱材に何を使っているかよりは、しっかり丁寧に正しい施工をしてくれる会社を選ぶことが重要なのかもしれませんね。