孤独な大都会の中に溢れる優しさに気づく~ニューヨークのとけない魔法(岡田光世著)
こんにちは、いつもありがとうございます。チームエルハウスです。
東京とニューヨークはどこが違うのか?
電車に乗れば誰もが孤独にスマートフォンと向き合い、街でも知らない人と言葉を交わす機会などまずありません。誰も人がいないかのような日本の都会の暮らし。ニューヨークに住み慣れた著者は、久しぶりの東京とのギャップに寂しさを漏らします。
自分はなぜニューヨークに魅せられるのか? 誰もが一度は憧れを持つ大都会ニューヨーク。せわしなく行き交う人々で溢れていることでは東京と同じはずなのに、人の心同士が触れ合う瞬間に満ちています。それを集めた小粋な言葉があふれる魔法の本です。どの話にも、心に響く英語のフレーズが入っています。
New York City can grow on you.(ニューヨークって次第に虜にされる街だよ)
近代美術館のカフェや中庭で毎週金曜に開かれる無料のジャズコンサート。ビールやコーヒー、サンドイッチを片手に演奏を聴けるので、多くの人が仕事終わりにふらっと立ち寄ります。来るはずだった友人が現れなかった者同士で、隣席の女性と演奏の合間に雑談することになった著者。カウンセリングの仕事をしている彼女は、ニューヨークに長居するつもりはなかったのに、気づけば20年も経ってすっかりニューヨークに虜にされてしまったとのこと。
人の心をほぐす力のある本
人とのささやかな触れ合いを、ニューヨークを舞台に描いたエッセイで、極上の掌編のような「いい話」が詰まっています。人にも風景にも優しい著者の語り口が魅力。孤独なようで、孤独ではない。お互いを気にかけながら生きているニューヨーカー同士の繋がりに羨ましさを感じながらほっこりと優しい気持ちになれる一冊です。
岡田光世著
『ニューヨークのとけない魔法』
(文春文庫)
定価:682 円+税