
“普通”に紛れ込んでいる、強くて優しい日常。~僕らのごはんは明日で待ってる (瀬尾まいこ著)
こんにちは、いつもありがとうございます。チームエルハウスです。
そっとまわりを見まわしてみてください。気丈に振る舞っているあの人も、しかめっ面をしているあの人も、秘めている思いや信念を持っているかもしれません。「人はひとりでは生きていけない」とは手垢のついた言葉ですが、それが素直に心に響く小説です。中島裕翔さん、新木優子さんのW主演で映画化もされています。
動き出した時間
葉山亮太は、中学生の頃に慕っていた兄を病気で亡くして以来、死の意味を探るように過ごしてきた高校生。誰からも話しかけられないほどたそがれて、ぼうっとして、それでいいんだと諦めているような生き方。ところがそんな葉山に声をかけてきたのが、もの好きな上村小春。かたまってしまっていた亮太の感情や表情が動き出し、自分の時間を再び生きはじめます。
ふたりの恋はどこへ向かうか
一見、ただの青春ラブストーリーのようですが、ひと味違います。亮太と小春の恋人らしくない屁理屈の言い合いがどこか現実的で、親しみを感じさせずにはいられないのです。「ポカリスエット」「ケンタッキー」といった現代的なキーワードが出てくるのも、リアルな世界を感じさせます。亮太と小春の中にある葛藤や過去の傷をイメージさせる不思議な雰囲気は優しく、とても力強いものです。
ふたりの物語を読みながら、人はひとりで生きていけるほど強くも優しくもないということに気づかされます。相手という存在があって初めて、ごはんの美味しさも、愛も憎しみも怒りも、希望も生まれてくるものだということを思い出させてくれるのです。生きるっていいなぁ。大切な人とそんな感想を交わしてほしいと心から思える、おすすめの本です。
瀬尾まい子著
『僕らのごはんは明日で待ってる』
(幻冬舎文庫) 定価:500 円+税