神様からの贈り物を受け取るための条件~ギフト(原田マハ著)
こんにちは、いつもありがとうございます。チームエルハウスです。
人は誰でも他者と関わり、なんらかのコミュニティに属しながら、自分が生きていることを実感しています。自分のしたことが誰かを救うこともあれば、その逆も然り。それによって自分の存在価値を実感できた経験はありませんか。その相手が家族であろうと、全然知らないたまたま向かい合わせに座った相手であろうと。
別れた母との思いがけない再会
本書は短編集ですが、最も長いのはラストの「ながれぼし」という作品です。
物語は、主人公・流里が大切な命を授かったところから始まります。父親は大学時代に出会い、気づけば付き合って7年の志郎。両親のいない流里とは違い、立派なお屋敷の息子である彼。格差に不安をもちながらも婚姻届にサインした二人。ある夏、一泊二日の温泉旅行に流里を連れ出した志郎は、妻の妊娠をうれしげに仲居さんにまで報告して流里を苦笑させますが、実はその仲居さんは流里の実母で……
誰でも人が生まれて初めて目にするのは母親、そして父親です。それから祖父母や近所の人に面倒をみてもらって、どんどん成長していきます。子どもが生まれるということは一種の奇跡で、当たり前ではないことです。親になることを望む人にとっては、泣くほどうれしいことのはずです。でも、人を育み、人とのつながりを選んで生きていった先で、何かが崩れてしまったために、バラバラの人生を歩む「離婚」を選ぶ人もいるのです。
神様からのギフトとは?
流里の母は、このタイミングで娘と再会したことを「神様からのギフト」と呼びました。このまま死ぬまで会えないと思っていた娘、しかも新しい命を宿して自分の足で立っている娘。娘を置いていったことに計り知れないほどの後悔に苦しみながら、12年ぶりに邂逅する母娘の姿には、人には簡単に説明できない、なんとも温かな気持ちの交流があります。
生きていれば良いことも悪いことも起こるでしょう。それをきちんと正面から受け止め、消化していくこと。それこそが神様からのギフトを受け取るための条件なのかもしれませんね。
区切り線4行ドリいたくな物語です。
原田 マハ著
『ギフト』
(ポプラ文庫)
定価:682円+税