淡い、苦い、甘酸っぱい思い出たち~青春ふたり乗り(益田ミリ著)
こんにちは、いつもありがとうございます。チームエルハウスです。
毎日制服を着ていた若かりし日々。まさに青春の真っただ中。二度と戻れない時間だからこそ、大切で、少しせつない時代です。授業中に居眠りしたり、携帯をいじったり、スカートを短くしたり、学校帰りに友達や彼氏と遊びにいったり。
それは、大人になりきれていなかった不完全な存在だったからこそ無敵にふるまえた時代なのかもしれません。それを経験したからこそ、人は少しずつ大人になっていけるのでしょう。
やり残してしまった青春
本書は、中年と呼ばれる世代に仲間入りした著者による、叶わなかった青春のかけらを描いたエッセイ集です。“10代の恋愛”というワードにこだわる益田さんは、幾度となく妄想したシチュエーションを語ります。
学校終わりのファストフード店でのデート、彼氏のブレザーを借りて寒さをしのいだ特別感、自転車で二人乗りしてただひたすらに進んでいく帰り道、バレンタインやクリスマスのウキウキ感……。カップルならではのドキドキを、自分はどこかにすっかり置いてきてしまった、と著者は嘆きます。たとえ今同じようなシチュエーションになったとしても、自分自身はあの頃とは違う、それが物足りないのだと。
全力で生きた時代があるからこそ
人は大人になるにつれて人生のやり過ごし方を学んでいきます。良い意味で、力を抜くやり方というふうにも言えるでしょう。それに比べると、10代の日々は、誰もが常に全力で生きていました。その中で、自分を知り、その自分を認めてくれる異性の存在を青春の1ページとして刻んできたのです。
益田さんが置いてきてしまったと語るいくつもの青春は、どれも、読む者にとってもうなずけるものばかり。青春時代はやはり特別な時代だと気づかされます。自分と重ねてみたり、当時のクラスを思い浮かべてクスっと笑いたくなるような1冊です。
益田ミリ著
『青春ふたり乗り』
(幻冬舎文庫)
定価:506円(税込)