
トリプルサッシは本当に必要? コスパよくパッシブ設計で最適な窓を選ぶ方法
こんにちは。エルハウス宮坂(ふみねぇ)です。
こんなご質問をいただきました。
「トリプルサッシは標準ですか?」
いいえ、エルハウスは標準仕様にはしていません。
それにはきちんとした理由があります。
今回は、コストと機能のバランスを重視するエルハウスが、トリプルサッシについて語りたいと思います。
目次
断熱性=家全体のバランスが重要
確かに、トリプルサッシは二重サッシ(ペアガラス)と比べて断熱性能が高く、室内の温熱環境を向上させる効果があります。しかし、「すべての窓をトリプルにすればいい」という考え方には、本当に費用対効果があるのか?」という疑問もあります。
窓は本来、採光や通風を確保するために存在するもの。しかし、同時に「家の中で熱が最も逃げやすい場所」でもあります。だからこそ、窓の選定は慎重に行わなければなりません。そこで空気層を2重に作ったトリプルサッシという選択肢も出てくるわけですが、トリプルサッシは、現状とても高価です。なので、全ての部屋にトリプルサッシを入れれば、当然コストも高くなってきます。気候や標高、風向、眺望などの環境を考慮しながら、適材適所で使い分けることこそが、賢い家づくりといえます。
では、実際にどのように窓を選び、配置すれば良いのでしょうか?
1. トリプルサッシは「どこに入れるか」が重要
窓は、熱の出入り口でもあり、採光と通風のための開口部
家の断熱性能を向上させるために、窓の性能を上げることは有効です。しかし、すべての窓にトリプルサッシを採用すると、次のような問題が出てきます。
•施工コストが100~150万円以上アップする
標準仕様になっている商品は、それだけのコストが含まれています。
•重量が増え、施工負担が大きくなる
2階に大きな窓を配置すると、必然的に荷重を支える必要があるため、梁を太くするコストもかかることがあります。
•窓が重くなり、開閉がしづらくなる
窓の大きさにもよりますが、1窓あたり50キロも違うなんてこともあります。ガラスは重いので、普段の開閉が頻繁なところはちょっと検討が必要になるかもしれません。
•外皮平均熱還流率(UA値)が、そこまで劇的に変わるわけではない
実際に弊社で検証した計算結果では、
•ペアガラス(アルゴンガス入り):UA値 0.45
•トリプルガラス(アルゴンガス入り):UA値 0.43
→ たった0.02の違いでした。
このわずかな差のために高額な費用をかけるならば、他の箇所の部材の性能をアップさせることで、家全体の断熱性能(屋根・壁・床)を強化するほうが効果的といえます。
2. 「パッシブ設計」を活かせば、すべての窓にトリプルサッシは不要
パッシブ設計とは?
自然の力(太陽光、風、地熱など)を活用し、エネルギーを最小限にしながら快適な室内環境を実現する設計手法です。窓の配置や性能を適切に選ぶことで、トリプルサッシに頼らなくても温熱環境を整えることが可能です。
パッシブ設計での窓の考え方
✅ 日射取得が見込めない場所(北側や吹き抜け)
•→ 高断熱仕様の小さな窓を使い、断熱性能を確保(トリプルサッシ採用も検討)
✅ 日射を積極的に取り込みたい場所(南側のリビングなど)
•→ 大きな窓を採用し、日射取得型Low-Eガラスを活用(ペアサッシでも十分)
•→ 適切な庇(ひさし)を設計し、夏の日射をカット、冬の光を確保
✅ 西日が強い場所(西側の大きな窓)
•→ 窓のサイズを小さめにし、外付けシェードやブラインドで遮蔽
✅ 風を通したい場所(南北の通風経路)
•→ 縦滑り窓や横滑り窓を適切に配置し、効果的に換気
こうした工夫を取り入れることで、「トリプルサッシで断熱を高める」のではなく、「窓の配置と使い方を工夫することで、快適な住環境を作る」ことができます。
3. 窓の形状・種類を活かせば、断熱性能を上げられる
窓の選び方は、「ガラスの性能」だけでなく、「窓の形状・開閉方式」でも大きく変わります。
✅ 窓の種類ごとの特徴
窓の種類 特徴 適した用途
- FIX窓(はめ殺し窓) 最も気密・断熱性が高い。開閉不可。 玄関・吹き抜け・高窓
- 縦滑り窓 気密性が高く、風を効率よく取り込める。 採風を重視する場所
- 横滑り窓 縦滑りよりも雨が入りにくい。上部換気に適す。 キッチン・浴室
- 引き違い窓 断熱性は低いが開閉しやすい。 掃き出し窓・バルコニー
- 片開き窓 断熱性は高いが、開閉時にスペースが必要。 玄関横・小窓
例えば、北側の窓をすべてトリプルサッシにするのではなく、「小さなFIX窓で断熱性を高める」ことでも、同じような効果を得られます。
4. そもそも、なぜ家を建てるのか?
最後に、家づくりを考える上で、一番大切なのは「なんのために家を建てるのか?」ということです。
窓にかける150万円のコストで、どれだけのメリットがあなたの生涯に訪れるか?メリットを受け取るということは、反対に、手放すものもあるということです。
•「家で過ごす時間を何よりも快適にしたい」 → 窓だけでなく、家全体の断熱性能を上げることが大切。
•「コストを抑えつつ、バランスの取れた家を作りたい」 → トリプルサッシに拘らず、窓の適材適所を考える。
•「家は家族のためにあり、安心できる生活が最優先」 → 安心のためには人生設計が重要。
「高性能な窓を採用すること」や「断熱性能の良い家を作ること」自体が目的ではなく、「家族が快適に安心できる住まいをつくること」が本来の目的 です。そのためには、トリプルサッシにこだわるのではなく、適材適所で最適な窓を選ぶことが大切です。
5. まとめ
✅ トリプルサッシを全窓に採用すると、100~150万円以上のコストアップ
✅ UA値の向上はわずか(ペアガラス0.45→トリプルガラス0.43)
✅ パッシブ設計を活用すれば、適切な窓配置で十分な温熱環境を確保できる
✅ 窓の種類・配置・形状を工夫すれば、トリプルサッシなしでも快適な住まいに
✅ 「何のために家を建てるのか」を考え、最適な窓を選ぶことが重要
家づくりは「どの性能を上げるか」ではなく、「どんな暮らしをしたいか」から考えるべきもの。エルハウスでは、窓の性能だけに頼らず、パッシブ設計を活かした最適な住まいを提案します。
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